恋がはじまる日
「えーっと、保健委員だからって、一緒に来てくれたんだよ」

 あれ?そういえば私の様子を見に来てくれたのって、保健委員だからだったのかな?


 ちらっと横目で藤宮くんの様子を窺ってみるも、彼は何も言おうとはしなかった。


「ふーん」


 椿は訝しげに私達を交互に見ていたけれど、私の手を取るとゆっくりと歩き出す。


「さ、応援席戻ろ」

「う、うん」

 彼に支えられながら、私はゆっくりと歩き出す。藤宮くんが手当してくれたおかげで、足首の痛みは少し和らいでいた。



『「俺の気になる女の子が佐藤だったら、佐藤はどう思う?」』



 藤宮くん、さっきなんであんなこと聞いてきたんだろう。

 後ろを振り返ると、ちょうど藤宮くんと目が合って、私は慌てて目を逸らした。


 また心臓がどくんと大きく跳ねた。


 あ、まただ。この落ち着かなくて、息苦しくてやたらドキドキとうるさくて、それでも嫌な感じはしなくて、心が温かく優しくなるような…。
 藤宮くんといる時、話している時、最近よくそんな気持ちになる。
 どうしてか、もっと一緒にいたいとか、話していたい、って思う。


 ん?あれ?これって…。
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