黒い龍は小さな華を溺愛する。

フードの男は秋元のすぐ横まで来ると、わざと顔を寄せた。


周囲には聞こえないほどの低い声で、囁く。


「……DRAGONKINGの件で、報告があります」


「ぁあ?なんだよ」


秋元が苛立ち混じりに吐き捨てる。

その耳元に、さらに近づいて。


「……潰されるのは、てめぇの方だ」


ドクンと心臓が大きく揺れる。


――この声、知ってる。


フードの隙間から見えた片方の目……


「お、おまえっ!」


秋元の声と同時に、フードが振り払われた。

忘れようとしても、忘れられなかった人。


「常盤……くん?」


信じられなくて、か細い声しか出ない。

次の瞬間、常盤くんの拳が容赦なく秋元の顔を打ち抜く。


「汚ねぇ手で、沙羅に触んじゃねえ!」


鈍い音とともに、秋元が床に転がる。

ほんの、一瞬の出来事でめちゃくちゃ早かった。

倉庫が凍りつく。

誰も声を出せない。

誰も動けない。





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