黒い龍は小さな華を溺愛する。
紫藤くんはこの状況なのに、片方の口角を上げて笑みを浮かべた。
「大丈夫。あいつは簡単にやられるようなやつじゃない」
「でもっ……」
「俺を信じて!早くここから出るよ!」
後ろ髪を引かれながらも、私は倉庫から出た。
振り返った一瞬、常盤くんがこちらを見た気がした。
――大丈夫だ。
遠かったのに、そう言われてるような。
そんな気がした。
紫藤くんのバイクに乗せられ、私たちは急いでその場を去る。
背後でDemonの見張りの男が、何か叫びながら追いかけてきたけど耳を塞いだ。
――どれくらい遠ざかったのかわからない。
急な坂をバイクで勢いよく上ると、そこには錆びた柵に囲まれた古い展望台があった。
使われなくなってしばらく経つその場所は、街の明かりからも遠く、ただ波の音だけが響いていた。
「……ここまでくれば、ひとまず大丈夫だ」
紫藤くんがバイクを停めて、私も降りようとしたけど足に力が入らず転びそうになった。