黒い龍は小さな華を溺愛する。


「ごめん沙羅。今まで見て見ぬふりして」


「辛かった。たった一人の家族であるお母さんにもわかってもらえなくて……お父さんのこともずっと聞けずにいて」


母が視線を逸らし、静かに話しはじめる。



「あんたの父親はね……大企業の会長だった」


一瞬、言葉を探すように母は黙った。


「私のお客さんでさ、私が一番愛した人……。でも身分の差でね、妊娠したのに結婚は許されなくて」


「大企業の会長……」


「それでもあんただけは守りたかった。目立っていたらきっとあの人が気付いて、私からあんたを奪うんじゃないかって思ってたから」


初めて聞く話に驚きを隠せなくて。

常盤くんは繋がれた手をぎゅっと握っていてくれた。


「だからこの前店であんたのことを聞かれた時怖かったんだよ、連れて行かれるんじゃないかって」


あの時動揺して様子がおかしかったのはこのせいだったんだ。


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