黒い龍は小さな華を溺愛する。

一礼すると、ニコッと笑ってくれた。

あ、この笑い方、常盤くんに似てる……


「これ……お見舞いに買ってきました、チューリップ……よかったら」


花を見せると、常盤くんのお母さんが手を伸ばしてきたので、私と常盤くんで体を起こしてあげた。


「チューリップ……」


「はいっ、綺麗ですよねっ」


手に取ってじっと見つめている。


何かを思い出しているような……そんな表情で。



「うちの息子も……チューリップが好きだったの。幼稚園の帰りにね、よく歩道の花壇で咲いていて……欲しがっていたわ」


チューリップの花びらを指でそっと撫でながら、懐かしそうに話し出す。


その様子を、常盤くんは黙って見ていた。


「小さな手で『これきれいだね』って。でも……あの子のこと、ちゃんと見てあげられなかった」


ぽつりとそう呟く。


「一人で育てるのが急に怖くなったりして……」


視線が揺れて、遠くを見るような目になる。


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