黒い龍は小さな華を溺愛する。

……だめだ、考えれば考えるほど思い出しちゃって。


「さっきから様子が変なんですけど?」


にやっとした声。

案の定意地悪そうな笑みを浮かべていた。


「な、なにその顔!」


「いや?かわいいなーって思って」


「もーっ!」


反射的に睨むと、余計楽しそうに笑う。



「律の前ではあんなに余裕ぶってたのにな」


「それとこれとは違うでしょっ」


「へぇ?」


一歩、距離を詰められる。


それだけで心臓がぎゅっと縮まった。


「……沙羅」


さっきまでのふざけた空気が、少しだけ変わる。


低くて静かな声。


「戻ってきてくれて、ありがとな」


「うん……」


「別れ話とか辛すぎんだろ……」


「私も離れてた間、毎日後悔してた」


「俺も。俺の机で沙羅が寝てた時はまじでビビった」


「あ、あれね……」


「別れたのにやめてくれって思ったし」


「だよね……ごめん」


「でも絶対取り戻す気でいたけどな」


間髪入れずに返されて、驚いて顔を上げる。


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