私の想いが開花するとき。
里穂はポケットから外した指輪を取り出しカタンと小さな音を立ててソファーの前のローテーブルに置くと、その音に反応したのか健治が顔を上げ、驚いた顔を里穂に見せてくる。
(また、健治の新しい顔が見れた。それがこんな時だなんて、ね)
「あの人のことが好きなの?」
健治からの返事はない。その代わり今まで見たこともないような青ざめた顔を里穂に見せた。
「あのね、私健治とならごく一般的の幸せな家庭が築けるんじゃないかなって思って結婚した。でもずっと一人で寂しかった」
「里穂……」
自分はなんて都合のいい言葉を並べているんだろう。それでも気持ちはもう変わらない。もう自分の心の中に健治は一ミリもいないのだ。
「離婚しましょう」
「本気か?」
もう驚く様子もなく、いつもの表情のない健治に戻っていた。
「私も健治もお互いに最初から結婚に対して本気じゃなかったから、こういう結果になったんだと思う。私、健治が私のことをいつかは求めてくれるんやないかって思ってた。そしたら私も健治のこと本気になれるかもって、でもたった一回しか私達セックスしてない。会話だって最低限、よく言えば同居人みたいなものだったよね」
「それは……そうだな」
「でも健治だけを責められない。私だって健治に歩み寄ろうとしなかったから」
「里穂……」
「……ごめんね」