私の想いが開花するとき。
「はよ」
「おはよう」
何時に帰ってきたの? どこに行ってたの? なんの一言もなく健治は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しごくごく飲み始めた。
(もしかして私が朝帰ってきたことにさえ気づいてないの?)
里穂はゴクンとコーヒーを一口飲み、コーヒーの揺れる表面を見つめながら口を開いた。
「昨日ね、久しぶりに健治が結婚する前に連れて行ってくれたバーに一人で行こうとしたの。でもね、入れなかった。なんでだと思う?」
健治にゆっくりと視線を移すと初めて見る表情をしていた。皮肉なものだ。昨日から健治のいろんな表情をみているなんて。そして自分ではあんな写真のような、あの人に向けられていた顔を見せてもらえることはきっと永遠にないだろう。
「知らない。なんでだ?」
「健治がすごく幸せそうな顔してたから。あなたが男の人とラブホテルに入っていくのをこの目で見たの」
「……そうか」
健治はシンクに視線を落としなにも言ってこない。健治がなにを考えているのか一年一緒に過ごしてきはずなのに里穂には全く想像することが出来なかった。