いつか、君が思い出す季節
学校の中も十分に空気が冷たかったけど、外は尚更だった。
凍てついた風は陽射しを相殺するどころか呑み込んで、枯木立の道を縫って広がる。

プリーツスカートと靴下の間の膝小僧が、外気に触れてじんじんと痺れていた。
そのせいで、煙草屋の前のガードレールに寄り掛かり、スマホを弄る瀬川を見つけた頃には、私の頬は幼い子どものように熟れた桃の色をしていた。

瀬川は、私が近づくと影に反応して顔を上げる。
紺のマフラーの隙間から漏れる冬の息が、瀬川のすっきりとした輪郭を白く(ぼか)していた。

「どういう気分?」

普段より若干低い目線に問いかけた。
瀬川は寒さに首を竦めながら口を開く。

「カラオケ。取り敢えず中入りたい」
「駅前のとこ?ファミレスの裏?」
「ファミレスの裏。駅前の店はドリンクバー高すぎて無理」
「乗った」
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