俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く~ドSな旦那様の甘やかし政略結婚~
「天才はアシェルのほうだろ」

隆成さんは発泡性の和酒を傾けながら目をすがめた。

「リュウセイにそう言ってもらえるのはうれしいね。君はたしかに努力家でもある。君のメスさばきはまるで芸術のようだと評されていたが、僕は君の美しくて完璧な縫合が好きだ。その理由は、君が毎晩部屋で寝る前に縫合の訓練をしているところを見たからというのもある」

隆成さんはアメリカにいる頃、手術道具を部屋に持ち込み、毎晩欠かさず手技の訓練をしていたという。

彼の優れた技術はたゆまぬ努力に裏打ちされたものなのだ。

「そうだったんですね……」

思わず胸が熱くなり、隆成さんを見つめてしまう。

最初からなんでも器用にこなせるよりも魅力的に感じるのは私だけではないはずだ。現にアシェルさんも隆成さんに心を奪われている。

隆成さんはとても素敵なドクターだ。

「よかったね、リュウセイ。今の話でチサトが君に惚れ直したそうだ」

「えっ……!」

慌てふためくと、隆成さんがふっと噴き出した。

惚れ直したもなにも元々惚れてないから! とは、アシェルさんの前ではさすがに言えない。

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