俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く~ドSな旦那様の甘やかし政略結婚~
その間に光一さんと電話で話したのは一度きりで、ときどきメッセージアプリでやりとりをするだけだ。当然、直接会う機会はない。そのせいか光一さんのことを考える時間はほとんどなかった。

いつの間にか隆成さんのことばかりが頭の中を占めている。そんな自分の変化に驚きを隠せない。

「そういえば今まで聞いたことがなかったが、千里は兄さんのどこが好きなんだ?」

自分の気持ちがわからなくなって答えられずにいると、質問を変えられた。

「……穏やかで優しいところです」

光一さんを好きだと自覚した日の出来事を思い出し、話を続ける。

「好きになったきっかけは、出会って間もない頃に私の家に光一さんが遊びに来てくれたときのことでした。その日、私は風邪をひいて熱を出していて……」

もう二十年も前だ。私の部屋の前で母が光一さんに『ごめんね。うつるといけないから』と入室を断る声が聞こえた。

私はぼんやりした頭で、せっかく来てくれたのに……と思いながら眠りに落ちた。でもそのあと、誰かが手を握ってくれる感触で目を覚ましたら、なんと光一さんが私の部屋の中にいたのだ。

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