家の中になにかいます【短編】



家の前になんかいる。


私の部屋は二階の角部屋。アパートの階段を上って奥の部屋だった。あまりの衝撃で傘をボトリ、と落とす。でも仕方がないと思う。
みかんって書かれた段ボールに三角座りで鎧きた少年が入っているなんて思わないじゃないか。しかもずぶぬれ。今日は大雨で洗濯物をせっかく干したのに、ずぶぬれになっていることを心配して帰ってきたのだ。

ーーーーこれは通報が正しいんだろうか?

いや、正しいんだろうな。なにをどう間違っても警察に通報するのが正しいんだろうな。

スマートフォンを取り出すと、何故か充電が切れてた。
そんなことある??こんな運の悪いことある?!
仕事終わりに夜ごはんのレシピ検索しててそういえば切れたんだっけな。充電が持たなくなってきたとは感じていたが。貧乏性がこんなことに響いてくるなんて思わなかった。

意を決して近づいてみる。
上から覗き込んでみると、寝ているのかもしれなかった。
青みがかった黒髪はずぶぬれでべっとりしている。ほっぺは泥だらけだ。身体をゆする。

「なんでこんなとこにいるの?ねえ、てば!!」

うわーまつ毛なが。てかめっちゃ美人。真正面にしゃがみこんで声をかける。
思わず方言でるくらいびっくりしてる。
閉じていた目がうっすら開いた。水色の瞳が煌めいて、おっこちそうなほど目をまん丸にする。彼の背中がのけ反ってそのまま後ろにひっくり返った。がんと、頭をぶつけた音が聞こえたあと、彼は頭を抱えてこてんと転がった。そしてゆっくりと立ち上がった。周りを見渡して悲壮感漂う顔をしている。慎重は170センチくらいだ。コスプレした外国人高校生なのだろうか。

「わ、大丈夫??頭うったんじゃない?」

「大丈夫だ、お前、いったいどこのものだ?」

慇懃な態度をとられてムッとしたが、彼は非常に困惑しているようだった。

「ここは日本よ、当たり前でしょう…?」

「にほん…俺の知っている国じゃない。まさかここは異世界なのか」

「は??」
< 1 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop