星空ポケット
季節とクラスが変わる度憂鬱になる。


そして今日もまた雨――窓から見る世界は昏く虚ろで、希望の光もささない。まだ慣れてない六月の教室は、憂鬱の青に染められている。



クラスメイトの名前は覚えられないから、適当に周りの物から例える。うっかり言ってしまった時の相手の顔はかなり滑稽だった。



あとは月のものが重いのが、さらに憂鬱を加速させる原因になっていた。腹部の痛みは何度体験しても馴染む気がしない。――正直、保健室で休ませてもらいたいのが本音だが、言い出せる勇気もない。



心と体の疲弊する六月。


ここを切り抜ければ眩しい夏がやってくると自分に言い聞かせてたら、隣の男子がスッと手を上げた。一瞬チラッとこちらを見、目が合う。たったそれだけの事なのだが、胸に小さな希望の光が灯ったような気がした。



「すみません。小町さんが体調悪そうなので、保健室連れて行っていいですか」


「おーいいぞ。星空が行ってくれると先生も安心だしな」


「はい」



この人、星空って言うのか。



他の生徒から「先生ひどーい」などと周りからドッと笑いが起きてる中、教室を出た。


暫く無言のまま廊下を歩いていたが、星空がふっと表情を緩めた。クールフェイスのイケメン顔が崩れると、こんなにも破壊力があるんだと知った瞬間だった。


「寝癖、ついてる」

「朝寝坊して」

「早起きは三文の徳」

「え? なにそれ呪文? あまり強くなさそうだけど……」

「なわけあるか。お前ちゃんと授業聞いてるの?」



呆れた口調で言いつつも、ちゃんと説明してくれる。


< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop