恋人らしいこと、しよ?
 あまり力を込めない優しい抱擁に、わたしもそっと晴樹の背中に腕を回した。


 二十秒くらいそうしていたかと思ったら、控えめに晴樹が口を開く。

「あの、さ……ギュッとしても、いいか?」
「う、うん」

 改めてのハグにすでにドキドキしていたけれど、拒む理由はないから頷いた。

 そして、ギュッと……男の子の力で抱きしめられる。


「っ!」

 想像していたより強い力で抱きしめられてビックリしたわたしは、晴樹の背中に回していた手で彼の学ランをギュッと掴んだ。


 強い腕に抱きしめられて、制服越しに晴樹の体温を感じて、鼓動が更に早くなった。

 なのに、晴樹は追い打ちをかけてくる。


「……っはぁ……美穂、かわい……」

「っ!?」

 思わずと言った様子で零れてきた言葉に、もはやわたしの心臓はバックンバックンいっている。

 心臓の音が晴樹に聞こえてしまってるんじゃないかと思うほど。

 耳だって、絶対に赤い。


 でも、離れることは出来なくてしばらくそのままでいると、今度は離れがたくなってきた。


 鼓動はトクトクと早いけれど、最初の勢いはなく落ち着いている。

 晴樹も離れがたく思っているのか、腕の力が緩むことはない。


「……なぁ、美穂?」
「うん?」

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