ツインソウル
 約束の日がやってきて緋沙子はピザハウス『プクプク』に到着した。
ここは石窯でピザを焼いていて味はまずまずだったので夜は予約をしていないと順番待ちになる店だ。

「一番奥のテーブルにどうぞ、みなさんお待ちですよ」

 (みなさん?)言葉に疑問を感じたがとりあえず予約席に向かう。

 丸い大きなテーブルに大人が三人座っている。由香里が緋沙子をみつけて「あ、こっちこっち」と、声を掛けてきた。

 頭をさげてから席に着くと由香里が紹介を始めた。

「せっかくだし、賑やかにね。えっと智樹は知ってるからいいよね。こっちが浩太」

 緋沙子は智樹と軽くアイコンタクトをし軽く頭を下げると智樹も静かに微笑んだ。浩太の方へ向き名前を告げる。

「佐々木浩太です。由香里の今夫です」

 明るく爽やかに言う浩太と、相変わらず物静かで落ち着いた智樹の対照的な雰囲気と、屈託のない元気な由香里の三人を、不思議な関係だと思いながら緋沙子は見つめた。

「深く考えなくていいですよ。仲良し三人組なんです」

 由香里が軽く関係を説明した。緋沙子は納得して「いい関係ですね」と、一言言った。
 赤ワインが運ばれてきて由香里と緋沙子のグラスにだけ注がれる。

「浩太は運転だし、智樹はここの近所だけどあとで送らせるから私たちだけね。乾杯」
「気にせず飲んでよ」 浩太が明るく言う。

「酔っぱらっても大丈夫ですよ」 智樹も静かに笑う。

 焼き立てのピザが運ばれてきて賑やかな食卓となった。由香里と浩太の盛り上がっている会話を静かに聞いている智樹。調和のとれた構図が緋沙子に安心感を与える。
 この関係の調和の要はきっと智樹だろう。
そしてこの調和のとれた姿は親子の関係にそのまま移行するのだろうと予測ができた。(夫との間に子供ができていたら……?)

こんな微笑ましい関係が家庭の中に築けたのかもしれないと思ったが、弘明もそして前々夫の孝之も緋沙子がそういう相手ではなかったのだろうとしょうがなく思った。

「食べてます?」

 智樹が優しく聞いてきた。

「久しぶりにいっぱい食べてます。」
「緋沙子さん実家に帰ったらどうするんですか?」

 由香里は率直に尋ねた。

「保育の仕事に就こうと思ってます。もともと保育士なんですよ」
「占いはもうしないの?」
「地元なので知ってる人も多いし、やりにくいかも」
「ところで実家どこなんです?」
「愛媛です」
「そんな遠くから来てたんだ。うどん美味しいんだっけ?」
「それは香川ですよ」

 笑いながら緋沙子が少しだけ四国四県の特徴を話すと三人とも関心を示したようだ。

「なんだっけ島あるよね。豆みたいな名前の」
「小豆島ですよ。オリーブで有名かな」
「この前テレビでちらとみたけど干潮のときに道が現れるんでしょ?」
「エンジェルロードのことかな。一日二回くらい現れるみたいですね。恋人の聖地って言われてて人気ですよ。私は渡ったことないですけど」

 小豆島には何度か遊びに行ったことがあるが、タイミングよくエンジェルロードが現れることがなかった。いつか誰かと、と若い頃は思ったりもしたが今ではもうそんな気持ちもない。

 ふと四国から出てきてまた帰る自分自身に疑問が湧いた。(私、静岡に結局何しに来たんだろう)
少し考え込んだ緋沙子に浩太が話しかけた。

「職業が占い師ってすごいですね」
「どうなんでしょう。女性はみんな占い好きですけど、仕事までにしちゃうってのは自分の人生とか疑問を持ち続けてたり男運が悪かったりでイマイチいい感じじゃないですね」

 少し自虐的だったかなと思いながらも、自分の意思が発揮する前に流されてしまってきたこれまでの人生を振り返る。

「これでバツ二になってしまうんですよね」

 思わず口に出してしまいハッとしたが由香里が「私も同じ。でも三度目の正直になると思います」と、明るい笑顔で言う。

智樹も静かに発言した。

「次は三度目の正直ですよ」

 自分のことを少しだが話すと、緋沙子も気持ちが明るくなって元気が回復するような気がした。

「そろそろお開きにしますかね。小春はもう寝ただろうけど。智樹、送ってあげて。近所でしょ」
「あの、平気ですよ」
「いいのいいの。同じ方向だし」

 楽しい時間を過ごせたことに緋沙子は感謝していた。

「もう少しサロンいますよね。何かあったら相談にいきます」

 由香里は親しみを込めて緋沙子を見つめた。浩太も笑顔で頭を軽く下げる。
 二人が去り、緋沙子と智樹も店を後にした。
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