Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
「ネモの仇、兄ヴィレントとの再戦。それが貴様の望みか? チェントよ」
「……はい!」

 私は祖父の鋭い眼光を真っ向から見据え、ハッキリと答えた。
 祖父はその言葉を聞くと、満足そうに笑い、頷いた。

「ヴィレントとの戦いで一度は敗れたと聞いたが、勝算はあるのか?」
「それは……わかりません」

 私は正直に答えた。

「正直だな。まあよかろう。ガイアスよ」
「はっ」

 祖父の玉座の隣に立っていた大男──ガイアスが答える。
 ガイアスは、私が初めてこの場所を訪れた時から、いつも祖父の隣に立っていた。この部屋にいる中でも飛び抜けて大きく、その体格は魔王をも超えていた。

「チェントをお前の部隊に入れてやることはできるか?」
「はい、問題ありません」

 ガイアスの答えに祖父が頷く。
 魔軍総長ガイアス。彼はそう呼ばれていた。魔王軍においてのナンバー2と聞いている。
 魔王城に滞在する主力4部隊の1つを束ねると同時に、祖父自身が出撃しない時の全軍の総指揮を執っている男だった。

「ベスフルの連中に砦を落とされたということは、次に奴らが攻めてくるのはこの城ということになる」

 祖父は立ち上がった。

「我々は総力をもって、奴らを迎え撃つ。今度こそベスフル軍は完全に終わりだ」

 祖父が拳を握りそう宣言すると、部屋にいる兵士達から歓声が上がった。
 宣言の後、祖父は再び私を見た。

「チェントよ。貴様の望みを叶えたければ、ベスフル軍が全滅する前に戦場で兄を見つけ出し、討ち取ることだ。これが最後のチャンスだと思え」

 その言葉を最後に、祖父は会話を打ち切った。
 私はその言葉に、返事を返すことも頷くこともできなかった。
 一礼して謁見の間を出ていく兵士達。

「待て」

 私もそれに続こうとすると、呼び止められた。声の主は、先程私を部隊に組み入れるよう命じられた男、ガイアスだった。

「お前は我が部隊に所属となったのだ。後で部隊の詰め所に来い」

 頷いて、部屋を出る。
 この2日後、遂に魔王軍とベスフル軍の最終決戦が始まった。



 魔王城と砦の間にある平原で、両軍は睨み合っていた。
 左右を見ると、大勢の兵士達が槍と剣を構えて、緊張の面持ちで平原の向こうを睨んでいる。
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