身代わり少女は主人を慕う
そして今日も、将吾様は来なかった。

どうして……

この手を放さないって、言ってくれたのに。


その時だった。

庭が賑やかになった。

将吾様が、帰って来たのだ。

私は急いで、障子を開けた。

だけど、そこには……


「ねえ、将吾さん。今日ならいいだろう?部屋の中に入っても。」

「美晴姉さん。何度言ったら、分かるんですか。兄貴にバレますよ。」

「あら、主人は私の事なんて、これっぽっちも気にかけては、いないよ。」

将吾様の腕に、美晴さんがしがみついていた。


何で?

将吾様、美晴さんと何かあるの?


「そんな事言って、帰って来たら私に会わないと、寂しいくらいになったでしょうに。」

「別に、そんな事は……」

その時、将吾様と目が合った。

「いい加減にしてください。」
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