身代わり少女は主人を慕う
将吾様は、私の事をちらっと見ながら、自分の部屋に入って行った。

何も、仰ってはくれなかった。

私はゆっくりと、その場に膝を着いた。


そして、庭の草木がガサッと、音を立てた。

「あら、お嬢様。もしかして、盗み見?」

さっき将吾様の側にいた美晴さんが、私の側にやってきた。

「お行儀が悪いわね。」

そう言って、私の事を見降ろした。

「行儀が悪いのは、どちらですか?夫のある身で、その弟と密会しているなんて。」

私も負けじと、睨み返した。

「うふふ。なんだか、以前と違うみたい。」

私はハッとして、下を向いた。

「いいじゃない?前みたいに、お澄まし顔のあんたよりも、ずっと魅力的よ。ただし……」

美晴さんは、私の顎を上に向けた。

「将吾さんに言い寄るのは、どうかと思うわね。」
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