星降る夜の奇跡をあなたと

ありがたみ

「和奏、和奏。こんな所で
 寝たら風邪引くよ」

「蓮?何で?帰ってくるの明日じゃ
 なかった?」

「うん。そうだったんだけど、
 和奏、元気かなって思って。
 でも泣いた?涙の跡が残ってる」

蓮が私の頬を指先で擦る。
私は無言で首を振る。
心配は掛けたくなかった。
結局私は、寂しくて泣いたのだ。
実家の滞在期間を切り上げて
帰ってきてくれただけで充分だ。

「蓮。おかえり」

そう言って笑顔を見せると、蓮は
私の手を握り

「和奏。どうして辛いのに笑うの?
 俺に心配掛けないようにしよう
 とか思ってるんでしょ?
 でもそれって余計に心配したく
 なる。今の和奏の事、知ってるのって
 俺だけだよね?だったら心配
 させてよ。これは俺の特権でしょ」

蓮の優しさに、また涙が溢れた。
蓮の言い方はいつもそうだ。
私が気負うことがない様に、
伝えてくれる。
少しずつ、私は今日あった出来事を
蓮に話した。蓮は、“頑張ったんだね”
と頭を撫でてくれた。それから、
“しっかりしてるとは思ってたけど、
行動力まであるとはね”と笑顔を見せた。
“今日、気付いた事は和奏が1人じゃない
ってこと。家族の中にちゃんと
和奏もいる。近くには俺もいる。
それに在り来りだと思ってた事が
幸せだなん気付いたんだ。
凄いことじゃない!?”
その日、蓮は私が1人じゃないと
証明してくれるかの様に、一晩中
私の手を握り傍にいてくれた。
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