星降る夜の奇跡をあなたと

サプライズ

蓮が修了式の日は、バレンタインの
お返しも含めてご飯食べを行こうと
誘ってくれた。
こっちの世界に来てから、
外食は初めてであった。
古着ではあるが、洋服を揃えて
おいて良かったと安堵した。

蓮が連れて来てくれたお店は、
大学がある所から3つ離れた駅に
ある、庭木に囲まれた
レンガ造りのビストロだった。
中に入ると、予約をしてくれて 
いたようで、柔らかい雰囲気の
年配の女性がすぐに席に案内してくれた。
メニューはどれも美味しそうで
選べずにいると、“和奏が気になるの
頼んでシェアしよう”と言ってくれた。
先にドリンクが来て

「バレンタイン、ありがとう。
 乾杯」

私達はグラスを合わせた。もちろん、
蓮は未成年だからソフトドリンクだ。

「いえいえ。こちらこそ素敵なお店に
 連れて来てくれてありがとう。
 それから無事に進級おめでとう!
 で合ってるよね?」

修了式は成績表も渡される。
そこで単位が取れているかどうか
分かるのだ。

「もちろん」

「だよね。蓮、学校から帰ると、
 部屋に居ることが多いから、
 きっと勉強してるんだなって
 思ってた。医学科だったら
 暗記量は半端ないだろうし、
 テストだって多いでしょ?
 プレッシャーだってあるだろし。
 それでも毎日コツコツやってるん
 だから絶対大丈夫だって思ってた」

「凄いな、和奏は」

「凄いのは蓮でしょ。
 蓮の努力の賜物」

「ありがとう」

話している間に次々に料理が運ばれ、
私達は食事を楽しんだ。
そろそろ食事も終わりに
近付いた頃、急に店内の照明が落ち、
音楽が流れ始めた。すると店の奥から
先程の女性がロウソクの付いたケーキ
を運んで来てくれ、私の目の前に
置いた。私が驚きを隠せずにいると、

「お誕生日おめでとう。
ほら、ロウソク消して?」

「何で、知ってるの?」

「1番最初に学生証見せてくれた
 でしょ?それにしっかり書いて
 あったよ」

「すご過ぎるよ。こんなに嬉しい
 誕生日は初めてだよ。
 ありがとう」

プレートにはロウソクの乗った
ミニホールケーキ。
その横に“Happy Birthday wakana”
とチョコで描かれていた。
ケーキを食べながら蓮が言った。
“さっき流れてた曲に
【宝くじを買って一等が当たるより
 奇跡的な確率で2人は出会えたんだ】
って歌詞があるんだ。
俺らにぴったりだと思って
選んでみた”

私の為に考えてくれ、
私の為に祝ってくれる。
こんな事をされて、
好きにならない人はいるの
だろうか?
私は蓮が好きだ。
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