星降る夜の奇跡をあなたと

声掛けられました

誕生日のサプライズの余韻が残る
4月。蓮は2年生になった。
授業に基礎医学が加わり、覚えなければ
いけない事が増え、更に大変そうで
あった。
久しぶりの流星群の日、
正直私の気持ちは複雑だった。
蓮への恋心を自覚し、
戻りたいけど戻りたくない、
そんな気持ちが入り混じっていた。

今回は“こと座流星群”だ。
いつも通りOne Treeへ向かう。
まだ寒さが残る時間だか、
1月の時に比べたら大分マシだ。
風邪を引いたら大変だからと、
出掛けに巻いてくれるマフラーは、
ここへ来るのにすっかりお馴染みに
なっていた。
One Treeに着き、その時を
待っていたが空が雲に覆われている様で
全く星が見えない上に
何も起こらなかった。
その後、2週間程で“みずがめ座η流星群”
の時期を迎えたが、雨で断念した。
蓮は流星群の度に一緒に来てくれ、
“心配しなくてもきっと大丈夫だよ”と
励ましてくれる。
この頃から早期体験学習として、
附属の大学病院での実習がコンスタントに
入っていて益々大変なのに、
私が居ることで邪魔じゃないかなと
思いつつも、まだだ蓮の傍に居られると
明らかにホッとしてるのだ。

本当だったら私も4年生に進級して
いるはずだったから、図書館での
勉強は4年次カリキュラムから
選び行っていた。

「これレポートの課題?」

今まで図書館にいても誰かに声を
掛けられる事なんて無かったから、
このパターンを予想して
いなかった。

「いえ、違います」

内心焦っていたが、あくまで冷静に
見えるよう答えた

「ちょっと見せて」

良いなんて言っていないのに、その人は
私が纏めたノートを取り、ペラペラめくり
見始めた。

「凄いね。これちょっと写させてよ。
 学食でなにか奢るからさ」

「えっ!?すみません。時間が
 ないので」

「じゃあ明日は?明日も授業あるから
 来るよね?一応、連絡先教えて」

展開が早すぎてついていけない…
あたふたしていると、

「和奏、お待たせ」

声のした方を向くとそこには蓮が
立っていた。蓮はすぐに
机の上にあった私の物を集め、
鞄につめると、私の手を取り、
“急いでるからごめんね。
それいーかな?”と
ノートを受け取り、
私の手を引いたまま足早に歩いた。
図書館を出ようとしたときに、蓮が
声を掛けられた。

「おいっ!急に走るからどうしたかと
 思ったら、そういうこと?」

あっ!この人!未来で合コンに
来てた人だ!

「悪い。1時間で戻るから」

「はいはい。いってら」

蓮は私の手を繋いだまま、
また歩き始めた為、私は会釈だけした。
着いたのは、空いていた
ミーティングブース。
中に入りドアを閉めるとすぐに
抱きしめられた。

「ナンパされてるかと思って焦った」

私は、事の経緯を話した。

「だから蓮が連れ出してくれて
 良かったよ」

「そっか。学校なら安心だと
 思ってたのに」

「安心だよ。ナンパじゃないし、
 蓮がいるもん」

私も蓮の背中に手を回し、
“心配ないよ”って伝わるように擦った。

「そーいえば、戻らなくても
 大丈夫なの?」

「あいつに言っといたから
 とりあえずは平気」

「蓮のお友達、この頃から一緒に
 居たんだね」

「えっ!?会った事あるの?」

「うん。彼が6年の時ね。
 合コンに来たの」

「和奏さん、和奏さん
 合コン行ってたんですか!?」

敬語の言い方が可笑しくて
可愛く思えた。自分は初めての
合コンで、その合コンに
蓮も来ていた事を言うと
“6年で合コンって俺、
何やってるんだか…”と
若干凹んでいるようだった。
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