星降る夜の奇跡をあなたと

生活するにはどうする?


こんな事になって眠れないと思って
いたが、図太いのか、思いの外
よく寝れた。朝起きると、遠藤さんは
まだ寝ている様で、勝手に漁るのも
悪いと思ったが、冷蔵庫を開け、
朝食を作ることにした。野菜は
無かったものの、一人暮らしにしては
食材があり、簡単な物だが用意する事が
出来た。先に一人で食べるのも申し訳
ないので、遠藤さんが起きるまで
これからの事を考えることにした。
本当は戻る方法を考える事が1番なの
だろうが、私一人の頭で考えるには
限界がある。ということで、まずは
目先の問題だ。衣食住。
住はとりあえずは大丈夫だとして、
衣と食だ。
私の財布の中には現金が16710円と
キャッシュカードが入っていた。
ただこれが使えるだろうか?
今より以前につくられたものなら
使えると仮定して、
キャッシュカードは子どもの時に親が 
作ってくれたものだから使える可能性
が高い。でも5年前にいくら入ってた
なんて覚えている訳がないし、
入っていても昔から少しずつ貯めてる
お年玉だろうから、15万あるかないか
だろう。
硬貨は製造年月日が記されてるから、
今より前に造られた物を選べば
良いとして、じゃあ、
お札はどうだろうか?
これは使って見なければ分からない。
とりあえず何処かでキャッシュカードも
お札もチャレンジしてみなければ。
そのお金が使えるのであれば衣は
クリアだろう。
問題は食だ。例えば今日、明日で
戻れるならまだ良い。
じゃあ帰れなかったら?
帰れたとして何ヶ月も何年も
先だったら?それに食だけではない。
生活していく上で光熱費に水道代。
挙げれば切がない。
その上、期限が分からないのだったら
尚更だ。そこまで遠藤さんに迷惑を
掛けていいもなのか?それに
働かなくてはならない。
でも戸籍も住民票も15歳の私の物は
あるだろうが今の私の物は絶対にない。
身分が証明出来なくても働ける所なんて
あるのだろうか?問題だらけで
頭が痛くなりそうだ…

「また難しそうな顔して」

その声にハッとする。

「おはよう。ちゃんと寝れたの?」

「あっ。おはようございます。
 ちゃんと寝れましたよ」

「なら良かった。なんかいい匂い
 するけど、もしかして作ってくれた?」

「勝手にキッチンすみません。
 軽くですけど」

「全然いいよ。ありがとう
 じゃあ顔洗ってくるから、そしたら
 一緒に食べよう」

食事をした後、
“さぁ何、難しい顔をしてたのかな?”
と聞いてくれた。私は先程考えていた
事を話した。遠藤さんは真剣に話を
聞いてくれ、話し終わると“うーん”と
唸ってから、彼自身の意見を言い
始めた。

「とりあえず、俺が今ハッキリ
 答えられる事から言うから。
 まず、手持ちの現金を試してみるのは
 良いとして、キャッシュカードは
 リスクが高いと思う。吸い込まれる
 可能性だってあるし、使えたとしても
 15歳の和奏の家族が気付いたら怪しむ
 だろうしね。働く所だけど、俺が
 今、登録制のデータ入力のバイト
 してるんだけど、それだと最初の
 面接とか手続きも済んでて、
 後はメールでのやり取りだから、
 それを俺の代わりにやってもらう
 のはどうかな?給料はそんなに
 高くないけど、歩合制だから、
 やった分だけ貰える。俺の名前に
 給料の支払いも俺の口座になるから
 ちょっと申し訳ないけど、ちゃんと
 和奏に渡すよ」

「是非、やりたいです。
 それに名前も口座も使わせて
 頂けるなんて有り難いん
 ですけど、いいんですか?」

「いーよ、いーよ。正直まだ
 疑って掛かってるから。和奏が
 稼いだお金、取るつもりなんて
 ないけど、一応俺の保険だと
 思ってね」

そりゃそうだ。何しろ、まだ私自身も
タイムスリップして来たなんて 
信じていない。それなのに、
他人が信じられるはずがない。 

「ですよね。もし、私が急に居なくなる
 事があったら、そこまで稼げるとは
 思えないですけど、全て遠藤さんの
 物にしてください」

「分かった。それから家だけど、
 気にしなくいーよ。このまま
 追い出すのも後味悪し、ちょっと
 面白い体験したと思っておく。
 光熱費とか水道代とかは俺も
 親が払ってくれてるから、いくら
 掛かってるとか分からないん
 だけど、万が一何か言われる様な
 事があったら言うよ」

「ありがとうございます。本当に
 何から何まですみません」

「いーって。じゃあ、大まかなことも
 決まった事だし、買い物でも
 行きますか!必要な物、沢山
 あるでしょ?和奏さん」

遠藤さんは、あえておちゃらけた様に
言ってくれたのであろう。
それは私を励ましてくれている
様であった。
それから準備をして私たちは、
買い物に出掛けた。
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