眠りにつくまで






「忍、明日も来る?」
「来る。もうここでどの作業も出来るようになったから引っ越し完了だ」
「じゃあ、明日光里を連れてくる」
「光里の仕事はまだだよ?見学?」
「勤務時間とか給料、休暇、何も決まっていないことを光里が気にしてる。忍が自由出勤のようでいいと思っていても光里はそうはいかない」

俺たち兄弟が話をしていると

「三鷹兄弟と光里ちゃんに温度差ありだな。おもしろい」

そう言いながら玲央がパソコンを閉じる。

「雇用契約書を作ってやったら納得するんじゃないのか?彼女に都合のいいように作ってサインさせればいい話だろ?…じゃあ、クライアント訪問してから直帰するわ、俺」

ひらひらと手を振り出ていく玲央を見送った忍が俺に言う。

「雇用契約書か…給料明細とか要るのか…」
「要る」
「見本くれ」
「俺が持っているのはクライアントのものだから守秘義務がある、見せられない」
「下に税理士事務所あったよな?相談してくる。今月確定申告したのもすごい納税金額になったんだよ。法人にした方がいいかもしれないから…そこも含めて相談してくる」
「後藤先生は信頼できるよ。毎月任せればいい」
「わかった」

今度は忍がひらひらと手を振り出ていく。俺はすぐに休み中の光里に電話をかけた。
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