眠りにつくまで





‘はい、聖さん?’
「光里、外?」
‘うん、ちょっと買い物’
「俺も一緒に行くのに…電車乗ったの?」
‘…うん’
「迎えに行こうか?」
‘大丈夫。重いものはないし’
「明るいうちに帰れる?」
‘帰る…あの…聖さん’
「うん?」
‘電話の用事…何だったかな?’
「別に」
‘…’
「休み中の光里は何してるかなぁと思って」
‘うん…’
「買い物はちゃんと俺が渡したカード使って」
‘……うん’
「もしかして、使わずにもう何か買った?」
‘ちょっとだけ…’
「100円のものでも俺の方使ってって言っただろ?」
‘…はい’
「使わなかったら倍返しだよ」
‘倍返し?’
「そう、倍返し。光里が1000円自分で払ったなら俺が2000円光里に返す」
‘…以後気をつけます’

光里には家族カードを渡したのに、なかなか使ってくれない。俺が一緒に買い物に行く時はいいのだが…こういう甘やかしは難しい。もう少し根気よく言い聞かせて、ゆくゆくは俺の財布を自由に開いてくれるようになればいいと思う。
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