眠りにつくまで






光里を抱き起こして毛布ごと膝に乗せ

「手だけ出せる?」

前を少し開けてやる。マグカップを両手で持った光里が

「聖さん…休んで。明日も仕事があるでしょ?私はお昼寝できるけど…」

小さく俺に言う。

「嫌」
「…いや?」
「今だけの光里を見逃すのが嫌」
「…今だけか…」
「そうだよ。3時間おきに授乳している光里は今の期間限定だからね」

それには何も言わず、ゆっくりと熱さを確かめるようにマグカップに口をつけた光里は

「美味し……真夜中のミルクも明け方のおにぎりも…私と聖さんの寝不足も期間限定…」

そう言ってまたミルクを飲む。

「そうだね。永遠に続くわけではないよ」
「うん」
「見逃すのが嫌なのと…もうひとつ」
「うん?」
「俺が授乳出来るわけではないけど、間接的であっても一緒に聖斗の世話をして俺も親になるんだと思うから、光里だけ眠い思いをしたり夜中に一人で世話しなくていいんだよ?光里は聖斗がお腹にいる間からしっかり母親だけど、俺は今、風呂に入れてオムツを替えてこうして聖斗の8回の食事に付き合ってやっと父親になっていくのだと思う」
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