眠りにつくまで





このところの不安に寝ては目覚め、寝ては目覚め…朝を迎えた。

5年前から辛くて仕方なかった3日。それが今は月に一度、(いつき)に会える日だと…決して楽しいことではない。でも辛いだけだった数年間と違い‘会える’…頭の片隅で、わかっている…この思いだけに生かされているのは間違いない。そしてその片隅の反対側で、この思いだけに生かされているのは危うい…そうともわかっている。

わかっているから、私はまだ大丈夫。

通いなれた墓地。10月の景色も覚えた。こんな景色を覚えるから樹の記憶がぼやけてくるのかもしれない。

樹、おはよう…ふふっ、今日二度目のおはようだ。起きてた?はい、どうぞ。

樹に一粒、私の口にも一粒。いつものキャンディを口の中で転がしながら樹と話す。キャンディが無くなれば…またね、と墓地をあとにする。今日も

‘樹、またね’

周りに落ちる葉っぱを3枚ほど左手で拾い、右手で冷たい彼に触れてからそこを離れた。出入口のごみ箱へ葉っぱを捨て、隣の水道で手を洗う。冷たい…先月と大違いだ。今日はこんなに早く来ることもなかったのに、樹に早く会いたくて来てしまった。8時30分を示す腕時計を見ながら、冷たい手をハンカチで包むように拭いた。
< 4 / 325 >

この作品をシェア

pagetop