眠りにつくまで





「大丈夫だよ、光里」

それだけ言うと、俺は目の前の皿に集中するように見せかけ、どう話をすれば光里が前に進めるのか考える。一歩進んだようにも見えるが、まだ半歩といったところか…まだ体調不良が改善されたという半歩。今のままで一歩を踏み出すのは難しいか…半歩と半歩で一歩だからな。手を引いてやるか、背中を押してやるか、迷うところだ…ここをよく考えろ、俺。

結果、どちらも必要だなと思う。今の光里には前にも後ろにもサポートが必要だろう。俺がそうしたいだけかもしれないが…

「光里が美味しそうに食べているのを見るの好き」

食べ終えた俺が言うと、彼女は最後の一口をモグモグ中だった口を‘モ’の状態で止めた。

「今固まってる表情も見逃せないね」

さらに言うと、光里はモグモグを再開して‘固まってる’と言われたからか自分の左右の頬を親指と人差し指でむにむにと挟んで解した。

「俺もむにむにしたいと思うほど可愛い、光里」
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