我が身可愛い大人たち

あんたのせいで。
あんたのせいで。
あんたのせいで、私は――。

「まぁ、言いたくないならいいけど……どんな理由にせよ、もっと自分を大切にしてあげて。和真との関係は、あなただってつらかったはず。お節介かもしれないけど、あなたってあんまり自分を可愛がってあげてないんじゃない?」

 絵里奈の喉元まで出かかっていた「あんたのせいで」は、喉奥に押し込まれ、声にならなかった。

 美鳥を見つめたまま大きく見開いた絵里奈の目に、なみなみと涙が浮かぶ。

 今まで、他人に大切にしてもらうことばかり考えていた。

 誰かに認められ『可愛い』と言ってもらわなければ、自分には価値がないのだと勘違いしていた。

(私、ずっと自分を蔑ろにしてきた。それを悪いことだとも思ってなかった。でも……ずっと、私は私に大切にされたかったんだ、きっと)

 美鳥が絵里奈に気づかせてくれた。

 夫と不倫していた、憎い相手であるはずなのに。

 絵里奈の口からひっく、ひっくと嗚咽が漏れ、小さな肩が揺れる。

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