我が身可愛い大人たち



「ごめん。明後日、行けなくなった」
「えっ?」

 後部座席に移動し、気怠い体を寄せ合っていたふたり。お互いの体液の匂いが充満した車内で、和真がぽつりと言った。

 ブラウスのボタンを留めていた絵里奈は手を止め、和真を見上げる。

 明後日は初めての外出デートで映画を見に行く約束をしており、絵里奈がふたりぶんのチケットを予約していた。

「いや、最近アイツ機嫌悪くてさ。誕生日くらいいい気にさせとかないと、絵里奈ちゃんとこうして会うのも難しくなるじゃん? だから……」
「なんだかんだ平さんって、奥さん愛してますよね。わかりました、チケットはキャンセルしておきます」

 絵里奈があっさり承諾したので、和真はホッとした。出会った時から一貫して物わかりがいい彼女は、本当に不倫相手に最適である。

 週に二、三回彼女の部屋へ行きセックスする関係はもう二カ月続いているが、周囲に勘付かれている様子もない。

 いつまでもこんな日々が続けばいいと、無責任にも和真は願っていた。

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