Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
なんとなく気まずくて、溜まり場に行くのを躊躇ってしまうからだ。

それに溜まり場に行くと、綺月に言われた言葉を思い出して気持ちが沈んでしまうのが目に見えていた。

綺月とは前みたいな姉妹の関係に戻りたいともちろん思っている。

だけど、そう思っているのはきっと私だけだ。

自分の感情だけで私は綺月の頬を初めて叩いてしまったし、何よりも綺月が言った言葉はどれも正しかった。

刃物のように鋭くて、私の心に刺さり今も取れない。

私が家族を捨てたくせに、昔の関係にまた戻りたいと私が望むのはムシがよすぎる話だ。

それでもやっぱりあの時のように我慢して、母に支配されながら生きていくのも限界だった。

聡が私に声をかけてくれなかったら、多分あの時自分は死んでいたと思う。

それくらい追い詰められていた。

家を出てから半年は何も手につかなかった。

聡の部屋に転がりこんで、母を初めて傷つけてしまった罪悪感と、綺月を一人にしてしまった申し訳なさに押し潰されそうだった。

しばらく経って、新たな人生を歩み初めてからも、家のことは気になっていた。

何度か家に行ったがインターホンを押すのをいつも躊躇った。

今更顔を見せて何を話せばいいのか。

そもそも私は許されにここに来ているのか、この罪悪感から開放されたくてここに来ているのではないのか。

今考えれば私は自分のことしか考えていなかった。

結局インターホンは押せないまま、気付くと二年も経っていた。
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