Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
家を出て、大学に向かっている私は気づくと綺月のことばかり考えていた。

顔を下げ足元を見ながら歩いていると、


「美月」


その時、誰かが私の名前を呼ぶ。

やっと顔を上げると、私の目の前にカオルが立っていた。


「カオル…」

「……今日、時間あるか」


カオルの表情と声のトーンからして、真面目な話だと分かった。

それは十中八九綺月のことだということも。


「昼休憩の時なら」

「じゃあ昼休憩の時連絡して、俺はそこらへんウロウロしてるから」


カオルのあんな真剣な目を見たのは初めてだった。

カオルはそれだけ言い残すと、私に背を向けスタスタと歩いて消えていった。


昼休憩に入り、指定された場所に向かうとカオルは寝不足なのか足を組んで目を閉じていた。

でも私が近くまで来ると、ゆっくりと目を開けた。


「ごめん、待たせたよね」

「いやこっちこそ、忙しいのに悪い」
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