Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「煙草臭くて悪いな」と謝りながら、車のエンジンを入れて動かし始める。

一喜さんは溜まり場の二階の部屋には居座らず、いつも下の階でみんなと遊んでいるから、部屋にずっといる私とは自己紹介以来話していない。

みんなが怒ると怖いと話していたから、てっきり鬼のような人かと思っていたが、全くそうではなかった。

よく笑うし、冗談も言って楽しませてくれる人だった。

聡さんとはまた正反対な人。


「にしてもこんなくそ暑い日に海ってアホばっかだよな」

「海嫌いなんですか?」

「海は見るのは好きだけど、暑いのが苦手なんだよな」


一喜さんはお洒落なサングラスをかけて、鼻歌を歌いながら優雅に運転していた。

最初に走り始めた一喜さんの車を、後からバイクで向かうAgainメンバーが次々と追い抜いて行く。

途中浮き輪を既に体にくぐらせた状態で、バイクに乗って運転している浮かれた不良を見て奈都と笑っていた。


「一喜さんはなんで車なんですか?」

「そりゃあ、カオルの妹が来るって聞いたからだよ」

「じゃあ奈都のために?」

「今まで妹連れてきたこと無かったくせに、どんな風の吹き回しだと思って電話したらカオル出ねぇし、男の後ろに乗せるのも過保護な兄がなんて言うか分からねぇから」


おまけに、面倒見もいいなんて、この人もしかしてかなり良い人なのでは…?
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