Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
ドタドタと大きな足音を立て階段を下りてきたお姉ちゃんと目が合う。


「お姉ちゃん…」

「…ごめん、綺月」


お姉ちゃんは靴を履くとドアノブに手をかけた。


「バイバイ、綺月」


その言葉と振り向かない背中に、お姉ちゃんはもう帰ってこないのだと悟った。

私はすぐにお姉ちゃんの後を追ったが、誰かのバイクの後ろに乗って立ち去りすぐに見えなくなった。

静かになった家から母の泣き声が聞こえた。

私は、ドクドクと鳴る心臓を必死に落ち着かせながら階段を上りお姉ちゃんの部屋を見る。

お姉ちゃんの綺麗だった部屋は、今までお姉ちゃんが勉強した問題集や辞書、教科書全てが床に散らばりグシャグシャになっていた。

私は知っていた。

お姉ちゃんが高熱の中勉強していたことも、成績を少しでも落とすと鼻血が出るほど夜遅くまで勉強していたことも、テスト前は悪夢に魘され眠れていなかったことも、母は知らなかったが私は知っていた。

お姉ちゃんはもうとっくに限界だったことを気付いていたのに、私は今まで気付かない振りをしていた。

それが今こんな形で崩された。

私がもっとお姉ちゃんを気遣っていればよかった、私が早く母に話していればよかった。

私が私が…と頭の中では不甲斐ない自分に腹が立った。

もう自由にしてあげたかった。

幸せになって欲しかった、お姉ちゃんには誰よりも。

そんな気持ちから、気付いたら母に言ってしまった。


「私がお姉ちゃんになる。
私が、お姉ちゃんの代わりになるから」


だから、泣かないでお母さん……

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