Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「無理！もう無理！頭に何にも入らない！！」


久しぶりに私が溜まり場に顔を出すと、菜穂が髪の毛を自分でグシャグシャにしながら発狂していた。

菜穂の机に散らばっていたノートや教科書に、私は瞬時に悟る。

菜穂は次のテストで赤点を二つ以上取ったら確実に留年するぞと担任にハッキリと言われ、今まさに死ぬ気で勉強に励んでいる。

ここ最近毎日勉強している本人はまさに力尽きて死ぬ一歩手前だった。

そんな菜穂を見て、幸人が苦笑いしながら菜穂が自ら乱した髪の毛を手櫛で直してあげる。


「もう…留年していい…」


発狂していたかと思えば、今度は屍のように生気を失いボソボソと独り言を呟く。


「留年したら、私と一緒に学校卒業出来ないよ？」


菜穂の横に座り、私は教科書を眺める。

躓いている問題がどこなのかひと目で分かるくらいには、菜穂の弱い箇所は理解している。


「それは嫌、頑張る、頑張るから綺月も手伝って〜！」


菜穂は私に縋り付くように抱きついてくる。