Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
私は呆れながら幸人を見ると、幸人はペンをクルクルと回しながら必死で菜穂の教科書と睨めっこしていた。


「そんなに集中して、何の問題考えてるの?」


テストを受ける張本人の菜穂よりも、幸人の方がよっぽど集中していた。


「いや、もっと簡単な求め方無いかなって考えてた」

「この問題応用だから法則を理解しないと解けない問題だよね」

「菜穂が一番苦手とする、法則だね。
同じ公式を使う問題でも、問題文が遠回しに書かれてると頭パニくるみたい」

「これとこれは同じ公式で解けるよね?」

「うん、でも、ここがちょっと違って、また別の公式で当てはめて求めてから、この公式を使わないと先に進めなくてね」

「じゃあ、こういう式はどう?」


そっちのけで問題の議論をする私と幸人の横で、菜穂が今まさに眠ろうとしていた。

完全に落ちる寸前で私は菜穂の頬をつねる。


「寝るな!やれ!」

「は、はい!」


勉強のことになると熱が入る私と、理解するまで何回でも寧ろうざいくらいに教えてくる幸人の指導のもと、日が落ちて夜空に星が輝きだすまで続いた。
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