Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「今日の夕飯なんだろうな」

「おでんって言ってたよ」

「まじか!冬には最高だな」


カオルは私にヘルメットを渡すと、バイクに乗ってエンジンをかける。

ほんの少し前までは、カオルのバイクの後ろに乗ることを拒否していたのに、今ではバイクに跨ることもお手の物だ。

この広い背中にしがみつくことも今では慣れた。

私は時々考える。

もし、この先カオルに会うことが無い人生だったら、私はいつまでもったのだろうか。

欲しいものも、大事にしたいものも無かった私は、昔の私だったら簡単に自分の人生に幕を下ろしただろう。

そう考えると、カオルにはやっぱり頭が上がらない。

私はカオルの腰に腕を回す力を強めた。

この先、私がどんな選択をしてもカオルは受け入れてくれて背中を押してくれるだろうか。

カオルの体温がカイロみたいに暖かくて、冷たい夜風で冷えた体が太陽に当たっている時みたいにポカポカと暖めてくれているようだった。

まるでカオルの存在そのものが太陽のようだと言いたげな言い回しをした。
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