Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「そんなにケンカしたいなら俺が相手してやるよ、そこに並べ」


聡さんは目にかかった前髪を乱暴にかき上げると、二年前の抗争で付けられた大きい額の傷が露わになる。

その傷を見た瞬間、カオルは構えていた拳を下ろした。


「どうした、並べよ」

「もういいわ、なんか面倒臭くなってきた」


カオルはそう言うと、さっきまでの威勢は嘘のように消えその場に座り込んだ。


「おい、なに腑抜けたこと言ってんだよ、立てよ」

「いやもうやる気失せた。そもそも聡が来た時点でケンカなんて出来ねぇよ、全力で止められるだろうし。なんなら俺たちどっちも潰されるだろ」


カオルがそう言うと、カイも同意見なのかその場に座り込んだ。

明らかに戦意喪失した二人を見て、聡さんは最後に大きいため息を零して、もう終わりかよとつまんなそうな顔をしている一喜さんと溜まり場に戻って行った。

私は安堵で胸を撫で下ろす。
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