お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 大知さんだって仕事や友人として私の知らない女性と連絡先を交換してやりとりするときもあるだろうし。

 その考えに至り、胸がわずかに軋む。すぐさま頭を振って帰りを急いだ。大知さんは今日も遅くなると言っていたけれど、帰ったらくつろげるようにご飯とお風呂の支度をしておこう。

 これくらい頑張らないと。私と結婚してよかったって彼に思ってほしいから。

 今日の夕飯は(さわら)の塩焼き、肉じゃが、春雨サラダとほうれん草のおひたしだ。魚以外は作りおきなのであまり手間はない。

 昔からお菓子作りや料理が好きで、高校や大学のときは自分や家族のお弁当もよく作ったりしていた。

 大知さんは好き嫌いがほぼなく、なにを作ってもおいしいと綺麗に食べてくれる。結婚してから彼のお弁当も作るようになり、最初は緊張していちいち味や出来栄えを尋ねていた。

 まさか大好きな旦那さまのためにお弁当や食事を作る日が来るなんて。

 夕飯は彼を待つので先にお風呂に入る。髪を乾かしソファでくつろいでいると、不意にリビングのドアが開く気配を感じた。

「ただいま」

 黒のビジネスバッグを持ちスーツ姿の大知さんの姿を捉え、足早に彼の元へ駆け寄る。

「おかえりなさい。お疲れさまです。ご飯、すぐに召し上がりますか?」

「ああ」

 にこやかに尋ねると短く返事があり、彼から空のお弁当箱を受け取る。定番となったやりとりだ。
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