お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 夕飯を外で済ませて帰宅してから、大知さんはどこかに電話したり、部屋で調べ物をしたりと慌ただしそうだった。

 私はおとなしく自分の時間を過ごして寝支度を整える。

 さっきコーヒーを自室まで持っていったから、飲み物はもう必要ないだろう。おやすみなさいと挨拶もしたし、これ以上は彼の邪魔になるだけだ。

 ベッドで休もうと横になったが、なかなか睡魔は訪れそうにない。今日は大知さんと出かけて、いつもよりたくさん会話できた。夫婦としての時間を過ごせた気がする。

 思い出して顔が勝手にニヤける一方で、今の状況が少し寂しく感じた。今夜も、この広すぎるこのベッドでひとり過ごすんだ。

 明かりの落とされたシンとした部屋で、私はぎゅっと身を縮めた。

 欲張ってどうするの。大知さんは十分に歩み寄ってくれたのに。

 心の中で自分を叱責し、目をつむる。そのとき部屋のドアがそっと開いた気配がして思わず上半身を起こした。

「……起こしたか?」

 パジャマに着替えた大知さんが驚いた面持ちでこちらを見た。お風呂に入ったようで乾かしたままの髪がさらりと揺れている。

「い、いいえ!」

 急いで否定し、さらにベッドの端に体を移動させる。大知さんは苦笑しつつ反対側のベッドサイドに歩を進め、ゆっくりとベッドの中に入ってきた。

 スプリングがわずかに軋み、硬直したままの私の心臓が加速して音を刻む。

 私に合わせてなのか、大知さんは横にならず、背だけ起こして私の頭にそっと触れた。状況が状況なだけに、こんな些細な触れ合いさえ緊張する。
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