お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「姉からでした」

 聞かれてもいないのに答える。一方的に気まずさを感じてスマホを元の位置に戻そうとしたら、今度は短く震えメッセージの受信を知らせた。

【夜遅くにごめん。お土産の希望を聞こうかと思ったんだけれど、適当に買っていくね。明日は楽しみにしてるから!】

 相変わらず自由奔放な姉らしい。私が妹という立場もあるのかも。苦笑して画面を見つめていたら、頭に手のひらの感触がある。

「明日は万希も来るし、もう寝たほうがいいな」

 優しく告げられ、なにも言えなかった。そのとき、再度スマートホンが振動する。

 さらに姉からミルクとココアの画像が送られてきた。ゴロゴロしている他愛ない二匹の写真だが、笑みがこぼれる。

 少しの間会っていないだけなのに、なんだかとても懐かしい。

「どうした?」

「あ、いえ。ミルクとココアの写真も送られてきて」

 説明して大知さんにも画面を見せる。

「官舎住まいじゃなかったら、連れてきてやれたのにな」

「い、いいえ! あの子たちにとっても住み慣れた実家がいいと思います。両親も姉もすっかりメロメロですし」

 なんとなく申し訳なさそうな大知さんに対し、慌てて否定する。転勤もある彼の立場を考えたら官舎ではなくても一緒だ。それに、猫は家につくって言うし。

「ありがとうございます。ミルクとココアまで気にしてくださって」

 大知さんの純粋な気遣いが嬉しい。すると彼は私の髪をそっと耳にかけながら頬を撫でた。
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