【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「彼氏に振られたとか?俺たちが慰めたげよっか、一緒に遊ぼうよ」
『…結構です』
相手が一人なら、隙を見て逃げ出すこともできたかもしれない。
けれど、四方八方をいかつい大人数に囲まれてしまっては、逃げる術なんてどこにもなかった。
恐怖で心臓がバクバクと壊れたような音を立てて脈打っている。
「遠慮しないでさ、ホラ遊ぼーよ。お姉さん可愛いし」
『いや…!離してっ!』
湿った手で無理やり腕を強く掴まれ、私は必死になって振りほどこうと抵抗した。
けれど、男の力強い手はびくともせず、グイグイと強引に引き寄せられていく。
どうしよう……怖い……!
こんな夜中に、こんな柄の悪い人たちに連れて行かれたらどうなってしまうのか、考えただけでも恐ろしい想像が頭を駆け巡る。
嫌だ……誰か……誰か助けて……っ。
「おい」
……!?
背後から聞こえた低い声。
その声に籠められた圧倒的な殺気に、私を強引に掴んでいた男の手が、一瞬にして恐怖で震えたのが分かった。
「…あ?なんだテメェ」
男が苛立ったように振り向いた瞬間。
「俺の縄張りの中で俺を怒らせたらどうなるか、知らない訳ないよな?」
私を縛り付けていた男の腕が、横から伸びてきた手によって容赦なく強烈に振り払われた。
「ギャッ……!?」
骨が鳴るような音とともに男が悲鳴を漏らし、私を守るように前に立ったその人影を見上げて、息が止まる。
そこに立っていたのは──全身から怒りのオーラを放つ、叶兎くんだった。