【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




「は?……待った、この顔どこかで…。も、もしや、White Lillyの………」

「おい、これ、やべぇって…」


叶兎くんの登場に、私に絡んできた男達の顔が一気に青ざめる。



「殺されたくなかったらさっさと消えてくれる?」



絶望的な恐怖に怯える男たちに向かって、叶兎くんは唇の端を吊り上げ、笑顔で一歩ずつ距離を詰めていく。

冷酷な笑みを浮かべながら静かに怒りを燃やす叶兎くんのこの表情……感情を全部表に出していない時の彼が、一番怖い。


こんな圧倒的な恐怖を向けられたら、誰だって一目散に逃げ出したくなるはずだ。

だけど男たちは叶兎くんの発する凄まじい威圧感に縛り付けられ、逃げることすら忘れてその場にガタガタと震えて立ち尽くしていた。



「………今すぐ失せろ。次この子に何かしたら、無傷じゃ帰れねぇと思え」



叶兎くんはさっき私の腕を掴んでいた男に距離を詰め、耳元で静かに脅すように言った。



「「「ひぃっっ…す、すいませんでしたぁぁ!!」」」



男たちは悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすような勢いで夜の闇へと逃げ去っていった。


こんな恐ろしいやり取りを目の前で見せられると、普段は学校で静かに過ごしている叶兎くんが、どれほど恐れられている存在なのかを再認識させられる。



「大丈夫…?」



男たちが消え去ると、叶兎くんの放っていた刺すような殺気が嘘みたいに消えた。

叶兎くんは、傘もささずに雨に打たれていた私へそっと一歩近づくと、自分の傘を傾けて雨風を遮ってくれる。




『……ありが、とう』



顔を上げられないまま呟いた。

叶兎くんに合わせる顔がなくて逃げてきたのに、その本人に助けられてしまった…。


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