【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「突然胡桃がアジトから飛び出して行ったって聞いてさ。焦って探しに来たら、怪しい男たちに囲まれてるから心臓止まるかと思ったよ……間に合って本当によかった」
『う、うん』
雨が容赦なく打ち付ける中、叶兎くんは胸を撫でおろしながら安堵の吐息を漏らした。
「……アジトで俺が目を離してた時、何かあった? それとも、あいつらが何か気に触るようなことでも言った?」
……理由なんて、言えるわけがない。
アジトであなたが他の女の子と仲良さそうに話して、血を吸わせているところを見ちゃったから──なんて、そんなこと口が裂けても言えるわけがない……!
冷たい雨の音に混じって届く、心配そうな声。
私はうつむいたまま、叶兎くんの顔を見ることができない。
今、どんな表情で私を見ているの……?
どうして……どうして私なんかを、そんなに一生懸命探してくれたの……?
胸の奥がギュッと締め付けられて苦しい。
返事を躊躇していると、叶兎くんの気配が少しだけ揺れた。
「…もしかして…俺が原因?それならちゃんと理由教えて欲しい、直すから」
まっすぐに突き動かされるような、嘘偽りのない言葉。
そんな風に正面からぶつけられてしまっては、私の中に隠せるような器用な嘘なんて残っていなかった。
『……仲良い女の子、他にもいたんだね』
「………え?」
……うわ、最悪だ。
口から出た瞬間、自分で自分に嫌気が差した。
何そのトーン、何この嫌味っぽい言い方……!
彼女でも何でもない、ただの転校生でしかない癖に。
「え、何の話それ。胡桃以外に仲良い女の子なんていないけど…」