【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
な…何で隠そうとするの…?
胸の奥で、悲しみが激しい怒りへと変わっていく。
私の血が欲しいから?
私を繋ぎ止めるために、そうやってまた嘘をつくの……?
だけど、この目で確かに見てしまったから、今更誤魔化されたってその事実が消えるわけじゃない。
『…さっき女の子と楽しそうに話してた…距離も近かったし血もあげてた』
「さっき…?…ってあれ見てたの?!」
私の指摘に、叶兎くんがハッと目を見開いて動揺を見せる。
その反応が決定打になって、胸の中で何かが弾けた。
『血が欲しいだけなら……“好き”なんて、思わせぶりなこと言わないでよ……っ!!』
こんなこと、絶対に本人にぶつけるつもりなんてなかった。
言ったら呆れられる。
鬱陶しいって捨てられる。
頭では分かっているのに、止めようとしても言葉が勝手に溢れ出して止まらない。
泣くつもりなんてなかったのに、不意に視界がぼやけて、温かい涙が雨に混じって頬を伝った。
自分がこれほどまでにショックを受けていたなんて、感情の歯止めが利かなくなるまで気づかなかった。
私の叫びを聞いた叶兎くんは、一瞬フリーズしたあと──。
「はー………」
深く、深いため息をついた。
だけどそれは、私に呆れたり怒ったりしている吐息ではなかった。
どこかホッとしたような、肩の力が抜けたような溜息で、彼は少しだけ気まずそうに口を開いた。
「それ………妹だから」
………………へ?
時の流れがピタリと止まった。
ざぁざぁと降る雨の音だけが耳に届く。
『え?!い…妹?!』
「うん。…実の妹」
頭の中が真っ白になって、一瞬でパニックに陥る。
その瞬間、さっきまで胸の奥に重く重くのしかかっていた黒い不安と冷たい恐怖が、嘘みたいにふわりと吹き飛んで消えていった。