総長は、甘くて危険な吸血鬼
『はっ…はくしゅん!』
…………あ
叶兎くんの言葉を遮るように、くしゃみが出た。
さっきまで雨の中傘ささずにいたからびしょ濡れで、顔は熱いのに体が冷え切っている。
「………一旦、部屋戻ろ」
『え?ちょ、』
叶兎くんにいきなり手を取られて、引っ張られるようにして走り出す。
アジトに戻ってきたかと思ばそのままエレベーターに乗せられて、かなり登ったところで広い部屋に到着した。
『叶兎くん?…あの…』
部屋に入るなり叶兎くんは棚をガサゴソ漁り始めて、タオルをホイッと投げられた。
これで雨拭いていいってこと?にしてもこのタオル大きいけど…
「この部屋の風呂、使っていいから。そのままだと風邪ひくよ」
確かに濡れたままだと風邪引きそうだけどわざわざお風呂貸してくれるなんて、初対面の時の叶兎くんからじゃ考えられない…
さっきも助けに来てくれたし、なんだかんだちゃんと優し──