【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
えーー…拒否権は……?!
みんな何が何でも叶兎くんにコスプレさせたいらしく、私がやるなら叶兎くんもやるという流れが完成してしまった以上、私に拒否権なんて存在しないらしかった。
結局、うちのクラスの出し物は『コスプレカフェ』に決定した。
ただし反対派の意見も取り入れて、元々案に出ていた謎解き要素を部屋の演出に組み込み、販売するメニューには男子が希望していたたこ焼きも追加することになった。
これなら誰も文句が出ず、クラス全員が納得できる素晴らしい案。
…まぁでも。叶兎くんのコスプレ姿は、ちょっとだけ見てみたいかも……。
「じゃあ今日は材料調達と予算とスケジュール確認、それぞれ手分けして進めよ!」
「「はーい!!」」
クラスの文化祭リーダーである心音ちゃんを中心に文化祭の準備が始まった。
白星学園の文化祭はかなり有名らしく、毎年当日は外部からたくさんのお客さんが押し寄せるそうだ。
クオリティが高い分だけ準備期間も長く取られていて、今週の一週間はまるまる文化祭の準備時間に充てられている。
「胡桃、ちょっと来て」
『うん?』
作業の合間、叶兎くんに手首をちょんちょんと引っ張られ、教室の隣にある使われていない空き教室へと連れ込まれた。
中に入ると同時に、ガチャリとドアの鍵が閉められる。
そして振り返る間もなく、そっと力強い腕に抱きしめられた。
背中に回された叶兎くんの右手に、よしよしとあやされるように優しく頭を撫でられる。
『い、いきなりどうしたの…?ここ学校…』
「この後生徒会忙しくなるから充電させて」
叶兎くん曰く、文化祭の時期は生徒会が一番忙しい繁忙期らしい。
全校生徒の出し物の取りまとめや安全確認に追われるため、自分のクラスの準備にはほとんど顔を出せないのだとか。