【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「……何でそんなに離れてんの?」
そう言うことは口に出さなくていいんだよ叶兎くん。
君のせいだよ。
『かっ、叶兎くんが変なこと言うから…!』
と言った途端、わざわざ距離をとったのに叶兎くんはゆっくりとこちらに身体を寄せてきた。
ベッドのスプリングが沈む音が小さく響く。
「ふーん、意識してるんだ?」
すぐ隣まで近づいてきて、覗き込むようにそう囁かれた。
『…だって、好きな人と2人でいたら、意識しちゃうよ……っ』
「……。」
一瞬、空気が止まった。
自分でも驚くくらい素直に言葉が出てしまって、後から恥ずかしさに押し潰されそうになる。
『あの……何か言って…』
数秒経っても返事がなく恐る恐る顔を上げると…。
叶兎くんは片手で顔の下半分の覆い隠すようにして、そっぽを向いていた。
その隙間から見える耳の先端が、心なしか赤くなっている気がする。
『叶兎くん…何してるの?』
「いや、ちょっと…可愛さを噛み締めてる…」
『な、何それっ……?!』
「………っ、コホン。それで、本当は用事があったんでしょ?」
強引に話を区切るように話題を変えた叶兎くん。
そんな照れ隠しにドギマギしつつも、私も本来の目的を忘れるところだったと思い出す。
大きく深呼吸をして暴れる心臓をなんとか落ち着かせてから、握りしめていたスマホを差し出した。
『そうだった!あのね、私のケータイなんだけど…』