【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
【side叶兎】
ガタガタと怯える胡桃を、俺は思わずベッドの上へ引きずり込み、がばっと二人まとめて頭から布団をかぶった。
布団の中は外の嵐が嘘みたいに、狭く静かな空間に変わる。
目と鼻の先、至近距離で呼吸を乱している胡桃の肩が、微かに震えているのが伝わってきた。
……相当、怖いんだな。
俺は迷わず胡桃の腰に手を回し、自分の方へと固く抱き寄せた。
華奢な身体がびくっと跳ねるように反応して、胡桃は必死な手つきで俺の部屋着の胸元をぎゅっと掴んで離さない。
「ゆっくり深呼吸して。大丈夫、そばにいるから」
耳元で囁きながら背中をさすってやると、乱れていた呼吸が少しずつ整っていく。
それでも、胸に伝わる鼓動は早くてまだ恐怖が拭えていないのが分かる。
胡桃が雷を苦手にしいているのは予想外だった。
…出会ったばかりの頃、友達を人質にされたときも、胡桃は自分の足で飛び出していった。
敵組織に追われても、女子に嫌味を言われても、受け流せるくらい肝が据わっている強い女の子だった。
…こうして弱さを見せてくれるのは……正直、嬉しい。
…今夜の雷は随分と激しいな
俺ですら思わず肩をすくめるほどの音だった。
雷鳴が再び夜空を激しく切り裂き、隙間だらけの布団の外から一瞬だけ眩い光が差し込む。
その瞬間、胡桃は「ひっ……!」と短く悲鳴を上げて、更にぎゅっと強く俺の袖を握りしめてきた。
え、何、可愛いんだけど。
こんな事態に、恋人の可愛さに悶えている場合じゃないことくらい分かっている。
………でも、大好きな女の子が自分を頼り、全力で甘えてきてくれているのだ。
男として、嬉しくないわけがない。