【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『叶兎、くん…?』
暗闇の中で表情は見えないけど…不安そうな、でもどこかわだかまりの消えた甘い声で俺の名前を呼ぶ。
「少しは落ち着いた?今夜はここで寝ていいから、ほら、目閉じて」
耳元で優しく声をかけてやると、胡桃は俺の胸元にちょこんと身体を完全に預けるようにして小さく頷き、そのまま大人しく目を閉じた。
それから数分もしないうちに、聞こえてきたのは規則正しい小さな寝息。
腕の中で安心しきったようにすやすやと眠りについた顔を見て、胸の奥がじんわりと温かい幸福感で満たされていく。
「……胡桃」
そっと、胡桃の髪の毛を撫でる。
「…これから先、面倒な事に巻き込んでしまうかもしれない」
手が届くうちに、守らないと。
手が届かないところに行ってからじゃ間に合わない。
さっき、数ヶ月ぶりに秋斗が帰ってきて、手に入れた情報を全部聞かされた。
BLACK SKYの総長、天羽 朔。そいつが胡桃を探していること。
その理由は、吸血鬼の契約。
──吸血鬼にとって特別な儀式。
本来、その契約は互いに強い愛で結ばれた両思いの者同士でしか成立しない。
けれど、代償と、特定の複雑な手順を踏んでしまえば、無理矢理にでも契約を成功させられてしまう危険な側面も持っている。