【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「胡桃、アイツに何かされたか?」
『え?ううん、何もされてないよ?』
天音くんの姿が完全に消えたのを確認してから、九条くんが真剣なトーンで話し始めた。
どうしてそんなことを尋ねてくるんだろう。
「アイツとは2人きりになるな」
九条くんの言ってることの意味がよく分からない、
天音くんと2人になるとまずい事でもあるのだろうか。
「これ以上の事は言えねぇけど…アイツといる時は、警戒心を持て。分かったか?」
『…わ、分かった』
一切の冗談を感じさせない真面目な表情で、真っ直ぐ私の目を射抜いて言ってくるものだから、私は「分かった」と頷くことしかできなかった。
九条くんと天音くんの間に、何か言えない重大な秘密があるのだろうか……?
「叶兎がそばにいれねぇ時は俺が守ってやる。まぁ昨日来たばっかの俺に信頼もクソもねぇと思うが…信じてくれたら嬉しい」
別に九条くんのこと信じてないとかそういう訳じゃないけど…
何でいきなりそこまでしてくれるんだろう。
「俺は叶兎に恩がある。アイツの大事な物は全部俺にとっても大事なんだ。だからお前の事も、守りたい」
そう言って私の目を見る彼の瞳は、真っ直ぐな瞳だなって、思った。
九条くんは、嘘はついていない。
どことなく、叶兎くんに似た雰囲気がある。
天音くんの事も、何か言えない理由があるのだろう。
「ほら、飯が冷めるから早く戻ってこい」
『…うん!ありがとう、九条くん。』
九条くんと初めて話したのは昨日なのに。
この人は信じても大丈夫。
根拠はなくても、直感で強くそう思えたのだった。